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岸田川でサクラマスを釣ること
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岸田川という日本海に注ぐ細くて短い川がある
数は少ないけどきれいなヤマメが釣れる
上流域では希にゴギも釣れるらしい

岸田川のことは
神戸で喫茶店をやっているIさんに教えてもらった
今から十年以上も前のことだから
1983〜4年頃のことだ

「わしらはヤマメとちゃうねんで」
「何ですのん?」
「もっとええモン狙うてるねん」

Iさんはすぐには答えを言わなかったが
狙いはどうやらサクラマスらしい

「数も型も北陸地方には遥かに及ばんけど確率はなかなかええんやで」
「なんでですのん?」
「誰も釣らへんからや」

なるほど
魚が100匹いる場所を100人で釣ったら一人あたり1匹になるが
10匹しかいない場所でも一人で釣ったら一人で10匹釣れる勘定になる
魚が十分の一しかいなくても釣果は十倍になるというわけだ

後日
Iさんから五万分の一の地図が送られてきた
実績のあるポイントには丁寧に赤鉛筆でチェックが入っていた

さて
通年券を購入したものの
宝塚から車で四時間ほどかかる上
解禁当初は雪が残ってたり
道路が凍結で通行止めになったりでなかなか近寄りがたい川だった

最初はIさんの地図を頼りにサクラマスを狙ったが
全く釣れなかった
それよりヤマメが面白かった
3番のタックルにエルクヘアカディス#16というのがこの川の定番
目の覚めるような美しいヤマメに出会いたくて何べんも山越えて通った

朝と夕方をそれぞれ2~3時間づつやって
25cm未満のヤマメが数匹
10匹以上釣れることはなかったと思う(ウデも悪かったし)
それでも
誰もいない川の気持ちよさを一度味わうと
もう他所で釣りするのがあほらしくなる
なにしろ
解禁日をだいぶん過ぎて購入した通年券の通し番号が0004番なのだ
上流部から河口部まで
いつどこを釣っても他の釣り人に出会わなかった
どこを釣っても常に先行者のいる奈良の渓流とは大違いだった

ある日の夕刻
イブニングライズまでにはまだ時間があるので
ルアーロッドをセットしてウグイでも釣って遊ぼうと思ったら
とんでもないモンがヒットしてしまった
反転した魚体を見て足が震えた
サクラマスだ

ロッドはペナペナのトラウトロッド
ラインは長いあいだ巻きなおしていない4ポンドナイロン
リールに至っては故障でドラッグが全く効かないとゆう代物‥‥‥
魚が走るたびにリールのベールを倒して糸を出して応戦した
ヒットルアーはなんとブレットンの7gだった

気が遠くなるぐらい長い時間かけて
ようやく岸にズリあげることができた
丸々と太った白銀の魚体は眩しすぎるほど輝いてた
54.0cmだった
サクラマスとしては特別大きいわけではない

以来
この川へ行くときには
必ずサクラマス用の無骨なほど頑丈な竿を携行した
しかしそれ以来
なぜかサクラマスどころか
ヤマメの方もさっぱり釣れなくなった

 二兎追う者一兎をも得ず

という通りである
そんなわけで
ここ2年ばかりこの川で釣りをしていない
聞くところによると
ヤマメの放流量が格段に増えたらしい
魚が増えたら人も増える‥‥‥
案の定
久しぶりに近くを通りがかったのでのぞいてみたら
いるわ
いるわ
河口から中流域にかけて
ほぼすべてのポイントにルアーを投げる釣り人が張り付いていた
少し前までは
丸一日釣りをしても誰にも会わなかった川なのになぁ・・・

こうして
ボクのパラダイスはパラダイスでなくなってしまった
まあ仕方のないことだ



1995年頃のメモより








































by angling_net | 2010-03-23 03:52 | 独り言


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